ギリシャ神話に登場する勝利の女神ニケ像を、独自の手法で再解釈した作品。アルミ線がビーナスに堅く巻き付いたようなこの作品は、模倣を通じて新たな創造物として生まれ変わる。しかしその中には、我々が知っているニケの姿はない。実在をそのまま形にしたが、実体はそこにはない。これは一見すると見慣れたオーラを放っているものの内面は存在しないという相反する実体を、パフォーマティブな技法を使用して表している。
薄い金網の上に風景や形を表現したり、アルミ線を巻きつける手法で事物と人体を形象化する韓国の代表的な金属造形家、パク・スンモ。彼は独自の新しい方法で対象を再解釈する。鉄という素材が持つさまざまな物性の変化とそれによって具現化される生と死、夢と現実の境界を行き来し、執拗なほどに細かいパフォーマティヴな行為を通じて、美しい造形性と実体を持たない実在というアイロニーを考察している。