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カジノサイト TECH

2026.03.10

カジノサイト TECH vol.53 耐放射線性カメラの特性 ~映像技術で過酷な環境下の作業を支えるために~ Part.2

【耐放射線性カメラの構成】

耐放射線性カメラの構成例を図1に示します。

高い放射線量域(高放射線領域)のカメラヘッド部は撮像信号を取り出す必要最小限の機能とし、低い放射線量域(低放射線領域)のカメラコントローラ部は複雑な信号処理(映像処理)を行う構成としています。これは、信号処理部が放射線に耐性のない一般の半導体素子を多用していることと、高放射線領域の放射線遮蔽容器内の回路の小型化を考慮したことによります。これによりシステム全体の信頼性を上げています。

高放射線領域のカメラヘッド部において、特に直接放射線を受ける光学部品と撮像素子は、耐放射線性カメラを構成するうえで最も重要な要素部品となります。

以下、これら光学部品と撮像素子について説明します。

図1 耐放射線性カメラ構成

【光学部品】

カメラの光学部品にはガラスで構成されたレンズや3板カメラのプリズムがあります。

一般的なレンズやプリズムの材料となる光学ガラス(硝材)にγ線を照射すると、図2に示すように着色する現象が発生します。この現象は放射線着色と呼ばれ、カメラの感度低下や色再現の劣化の原因になります。


図2 ガラスの放射線着色

図3に放射線による影響が小さいと言われる合成石英を硝材にしたレンズと、一般に用いられる監視カメラ用レンズのγ線照射後の分光感度特性を示します。一般的なレンズでは透過率が大きく劣化していますが、合成石英のレンズでは1MGyを超えても劣化が抑えられていることがわかります。

また、同様に3板用プリズムについても合成石英と一般的な硝材のものとの比較例を図4に示します。一般的な硝材のプリズムはレンズと同様に劣化が大きく、色再現が難しいことがわかります。

耐放射線性カメラでは、このような、放射線着色を抑制した特殊な硝材のレンズを用いることで監視画像の劣化を防いでいます。


図3 レンズの透過率特性


図4 分光プリズムの透過率特性

【撮像素子】

耐放射線性カメラに用いられる撮像素子として、従来は撮像管(受光面のガラスを石英ガラスに変え、放射線着色による感度低下を抑えた撮像管)が用いられていました。しかし、昨今は放射線への耐性を強化したCMOS撮像素子が開発され個体素子へと変わってきています。

図5に100Gy/hのγ線照射2秒後の一般のCMOS撮像素子と耐放射線性CMOS撮像素子の比較画像を示します。


図5 一般のCMOS撮像素子と耐放射線性CMOS撮像素子の比較

一般のCMOS撮像素子は画像全体にノイズが発生していることがわかります。ノイズは時間の経過につれ増加し、数十秒後には被写体全体がノイズに埋もれ判別ができない状態になります。

これは、CMOS撮像素子の光電変換部の表面がγ線により電気的に暗電流源となり暗電流が増加する原因であることが知られています。

耐放射線性CMOS撮像素子では、光電変換部の前面を覆うようにゲート電極を設け、ゲート電圧の調整によりγ線起因の暗電流を低減する構造などがとられています。また、読み出し回路などのトランジスタでも一般的な構造ではγ線により大きなオフリーク(漏れ電流)が発生し暗電流の原因となるため、オフリークを抑制する特殊な構造が採用されています。このような放射線に起因する暗電流の対策により高い放射線量の環境でもクリアな映像の提供を可能にしています。

また、γ線は波長が短いことから電磁波のエネルギーがとても高く、原子や分子に直接作用するため、半導体はγ線の集積線量の増加と共に特性が劣化します。耐放射線性CMOS撮像素子の半導体特性劣化は光電変換の出力低下として現れ、画像としては図6に示すようにダイナミックレンジの低下をまねきます。

これに対しては、カメラコントロール側の映像処理部で画像の鮮明化処理等で対策がとられています。

近年は、撮像素子の集積線量を伸ばす研究開発も進み、研究レベルでは集積線量1MGy超えのものも発表されており、高い放射線量の環境で、より長時間、安定した監視が期待されています。


図6 放射線集積線量増加に伴う出力劣化画像

【カメラヘッド部のその他の電子部品】

高放射線量域のカメラヘッドには、撮像素子を駆動制御する回路や撮像信号を伝送する回路、電源などの電子部品も存在します。これら電子部品は放射線の耐性が弱いため、鉛などの遮蔽材で囲む対策がとられています。ただし、遮蔽材は放射線の透過量を減衰させるだけですので、遮蔽材の重量や容積を考慮し、なるべく放射線の耐性が高い部品選定をするとともに、小型化のため最小限の回路構成としています。遮蔽材に鉛を用いた場合、放射線(γ線の場合)の減衰は1cmの厚さで約1/2、5cmで約1/10になります。高い放射線量域では、遮蔽が厚くなり重量、容量が大きくなるため、カメラヘッドの遮蔽部分を分離した構成がとられる場合もあります。

また、放射線の樹脂系素材への影響も大きく、コネクタやケーブル、配線材の絶縁材料についても耐性の強い材料を選定して使用されています。

耐放射線性カメラを構成する重要な光学部品や撮像素子の特性について2回にわたり紹介してきました。

耐放射線性カメラは人が近づくことができない高い放射線量の環境の映像監視には欠かせない存在です。映像技術を通して、核物質等を取り扱う現場の安全な作業に貢献しています。

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